mashima
直観はロジックと変化する
若いころの直観は、まだ感情に近い
「なんとなく、こっちが良さそうだ。」
若いころの直観とは、多くの場合そんな曖昧な感覚で、勢いや好み、憧れや不安といった感情に強く引っ張られていることが少なくありませんし、その直観が外れることも決して珍しい話ではありません。
それは直観が間違っているというよりも、まだ自分の中に判断の材料が十分に揃っていない状態であり、言い換えれば直観がまだ育ちきっていないだけなのだと思います。

経験が増えるほど、判断は静かになる
仕事を重ね、失敗をし、思い通りにいかない場面に何度も出会いながら、それでも続けていくうちに、人は少しずつ「考える前にわかること」が増えていきますが、その感覚は決して魔法のようなものではなく、過去の体験や結果が自分の中で静かに積み重なった結果として表に出てくるものです。
若いころの直観が感情に近いものだとすれば、経験を重ねたあとの直観は、次第に落ち着いた判断へと変わっていきます。
直観は、考え抜いた結果の「省略形」
経験を積んだ人の直観は、実はかなり現実的で論理的です。
本人は「感覚的にそう思う」と言っていても、そこには過去の成功や失敗、周囲の反応、空気の変化といった情報が無意識のうちに整理され、瞬時に結論として引き出されています。
直観とは、考えていないようで、実は考え抜いた結果の省略形なのだと感じます。
デザイン・企画・マーケティングの現場で起きていること
デザインや企画、マーケティングの現場では、「このデザインはたぶん伝わらない」「この企画は見た目は良いけれど、実行段階で無理が出そうだ」「この言葉は刺さる人と、まったく響かない人がはっきり分かれそうだ」といった判断が、会議の中でふと口をついて出ることがあります。
その場では明確な理由をすべて言語化できなくても、過去に見てきた事例や、実際の反応、クライアントの表情、地域や業界特有の空気感が、無意識のうちに判断材料として使われています。
経験を重ねると、直観はロジックになる
若いころは「かっこいい」「新しい」「目立つ」といった感覚が判断の中心にあったものが、経験を重ねるにつれて、「誰に届くのか」「どこで使われるのか」「その先にどんな行動があるのか」という視点が自然と含まれるようになります。
その結果、直観的に出した答えの中に、結果を見据えたロジックが溶け込むようになり、直観とロジックは切り離せない関係へと変化していきます。
直観は、育てるもの
本当に信頼できる直観を持っている人ほど、自分の判断を振り返り、なぜうまくいったのか、なぜ外れたのかと向き合い続けてきた人であり、直観を大切にしているように見えて、実はとても現実的で、地に足のついた考え方をしています。
直観は生まれつき備わった才能ではなく、経験と体験を積み重ね、失敗を引き受け、振り返り続けた人の中で少しずつ形を変えながら育っていくものであり、やがてそれは、その人にしか持てないロジックとして機能するようになります。
若いころの直観が外れることを恐れる必要はなく、その一つひとつが、次の判断を支える材料になっていくことを信じて、目の前の仕事と丁寧に向き合い続けることこそが、直観を育てる一番の近道なのかもしれません。
