「スマホ法案」とは正式名称を「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」（令和6年法律第58号）といい、略して「スマホソフトウェア競争促進法」と呼ばれるもので、2024年6月に成立・公布され、2025年12月18日に全面施行される予定です。

背景には、iOSやAndroidといったスマホOSやアプリストア、課金システムの市場がAppleやGoogleといった少数の巨大事業者によって独占的に支配され、新規参入が困難になっている現状があり、独占禁止法だけでは対応が遅れるため、あらかじめ禁止行為や遵守義務を明確に定めて競争を促進する新たな枠組みとして導入されました。

対象となるのは政令で定められた規模（利用者数が月平均4,000万人以上など）を満たす「指定事業者」であり、現時点ではAppleとGoogleが該当するとみられています。

何が変わるか？

禁止／義務事項の例

・他社アプリストアやブラウザの提供・利用を妨げてはいけない（サイドローディングの解禁）

・他社の課金システムの利用を妨害してはいけない

・デフォルトの検索エンジンやブラウザをユーザーが簡単に変更できるようにする義務

・取得したユーザーの利用データを自社の商品・サービス開発やマーケティングに不当に活用してはいけない

安全性への配慮

セキュリティやプライバシーが懸念される場合には制限可能とする「正当な理由（正当化事由）」が認められており、安全性とのバランスを図る努力も導入時点で明記されています。

EUのDMAとの比較

EUで先行して施行されている「デジタル市場法（DMA）」も同様に巨大プラットフォーマーの独占を防ぐために導入された法律で、アプリストアやブラウザ、検索エンジンの選択肢をユーザーに開放する義務を課しており、日本のスマホ法案はこのDMAをモデルにしつつ国内の事情に合わせて制度化されたもので、すでに欧州でAppleがアプリ配布の仕組みを変更したり、代替課金システムを解禁したように、日本でも同様の変化が起きると予想されています。

メリット

・選択肢の拡大：App Store や Google Play 以外のアプリストアの利用、代替の課金システム、検索エンジン・ブラウザの自由な変更などが可能になり、ユーザー・開発者双方に新たな可能性が生まれます

・競争促進による価格低下やサービス向上：手数料が下がる、より多様なアプリが登場する可能性

・イノベーションの活性化：新規参入者や中小事業者のビジネスチャンス拡大、開発の多様性が期待されます。

懸念点

・セキュリティ・プライバシーの低下：代替アプリストア解禁により、不正アプリ流入や詐欺アプリのリスクが増える可能性

・便利機能の制限：EU の DMA のように、AirDrop やマップ履歴、デバイス間のシームレス連携などが制限される可能性があるとの指摘もあります

・Appleに対する不利が大きい構造：広告収入型の Google に比べ、Apple はハード販売依存なので、割く余力や対応に差が出るとの指摘も

・競争の歪みやコスト増も：過剰な規制がイノベーションや事業運営に負担をかける恐れ、消費者に実感されにくいという指摘もあります

iPhoneユーザーが特に注意すべきポイント

スマホ法案の施行によって私たちユーザーの選択肢は広がり、アプリストアや課金方法を自由に選べるようになる一方で、特にiPhoneを使っている人はこれまで当たり前に使えていた便利な機能が制限される可能性があり、例えば端末間のシームレスな連携やAirDropのような独自機能が一部変更されるかもしれません。また、公式ストア以外からもアプリを入手できるようになることで多様性が増す半面、不正アプリやウイルスに感染するリスクも高まるため、今後は「どこからアプリをダウンロードするか」をこれまで以上に注意深く見極める必要があります。