mashima
働く理由が変わる時
若い頃は、ただ頑張ることができた。
もっと成果を出したい。
もっと評価されたい。
もっと収入を増やしたい。
もっと認められたい。
そうした気持ちが、仕事を前に進める大きな力になっていた時期があると思います。
寝る時間を削ってでも動く。無理をしてでも引き受ける。多少つらくても、結果が出れば満たされる。周囲から評価されれば、また頑張れる。
そうやって走ってこられた人ほど、ある時ふと感じることがあります。
「前みたいに頑張れない」
体力の問題だけではありません。気合いが足りないわけでもありません。成果を出しても、以前ほど心が動かない。評価されても、どこか満たされない。収入が増えても、思ったほど安心できない。
そんな感覚が出てくることがあります。
それは、怠けているのではなく、働く理由が変わり始めているサインなのかもしれません。

成果だけでは満たされなくなる時がある
仕事を始めたばかりの頃は、分かりやすい成果が大きな燃料になります。
売上が上がる。
お客様に選ばれる。
社内で評価される。
役職が上がる。
収入が増える。
できなかったことができるようになる。
こうした変化は、自信になります。
自分は役に立っている。成長している。前に進んでいる。そう感じられることは、働くうえでとても大切です。
ただ、成果や評価だけを追い続けていると、どこかで苦しくなることがあります。
なぜなら、成果は常に更新されていくからです。
一度うまくいけば、次はもっと上を求められる。売上が上がれば、来年はさらに上を目指す。評価されれば、評価され続けなければいけない気持ちになる。
最初は自分を動かしていたものが、いつの間にか自分を追い立てるものになってしまうことがあります。
第一のエネルギーだけで走り続けるのは難しい
成果、評価、収入、承認。
これらは、仕事をするうえで大切なエネルギーです。
お金をいただくことは大切ですし、評価されることも大切です。成果を出すことを軽く考えてよいわけではありません。
ただ、それだけをエネルギーにして走り続けるのは、年齢や経験を重ねるほど難しくなっていくことがあります。
若い頃は、外からの評価が大きな力になります。誰かに認められること、数字が伸びること、できることが増えること。その一つひとつが、自分を前へ押してくれます。
けれど、ある程度経験を積むと、外からの評価だけでは足りなくなる。
「それで、自分は何をしたいのか」
「誰のために、この仕事をしているのか」
「この成果は、自分にとってどんな意味があるのか」
そうした問いが生まれてきます。
これは、悪いことではありません。
むしろ、仕事が次の段階に入ろうとしているのだと思います。
第二のエネルギーは、自分が大切にしたい方向にある
昔のように頑張れない時に必要なのは、もう一度気合いを入れ直すことだけではないと思います。
必要なのは、新しいエネルギーを見つけることです。
それは、誰かと比べて勝つことではなく、自分が大切にしたい方向へ進むことです。
地域の役に立つ仕事をしたい。
お客様に本当に必要なものを届けたい。
若い人が育つ環境をつくりたい。
会社の考え方を言葉にして残したい。
自分が納得できる仕事を積み重ねたい。
目の前の人が少し安心できる仕事をしたい。
こうしたものは、売上や評価のようにすぐ数字で見えるものではないかもしれません。
けれど、長く働くうえではとても大きな支えになります。
外から与えられる評価ではなく、自分の内側から湧いてくる納得感。
それが、次の働き方を支えるエネルギーになるのだと思います。
頑張れないのではなく、同じ理由では頑張れない
「昔のように頑張れない」と感じると、自分が弱くなったように思うことがあります。
でも、そうではないかもしれません。
昔と同じ理由では、もう頑張れなくなっているだけです。
若い頃は、実績をつくることが大切だった。
認められることが必要だった。
収入を増やすことが安心につながった。
誰かに負けたくない気持ちが力になった。
その時期には、そのエネルギーが必要だったのだと思います。
けれど、経験を重ねると、仕事に求めるものも変わります。
ただ忙しいだけでは満たされない。
ただ売上が上がるだけでは納得できない。
ただ目立つだけでは意味を感じない。
ただ評価されるだけでは心が動かない。
それは、仕事への感度が鈍くなったのではなく、むしろ深くなったということでもあります。
空しさは、方向を見直すサイン
成果を出しているのに空しい。
これは、決して珍しいことではありません。
むしろ、一生懸命やってきた人ほど感じることがあると思います。
なぜなら、ずっと走っている時は、立ち止まって考える時間がないからです。目の前の仕事をこなし、数字を追い、評価に応え、次の課題に向かう。その繰り返しの中では、自分が本当は何を大切にしたいのかを見失いやすくなります。
空しさは、単なるマイナスの感情ではありません。
「今のままでいいのか」と、自分に問いかけているサインでもあります。
もっと頑張る前に、何のために頑張るのかを見直す。
もっと成果を追う前に、その成果が誰にとってどんな意味を持つのかを考える。
もっと忙しくする前に、自分が大切にしたい仕事の形を考える。
そうした見直しが必要な時期なのかもしれません。
仕事の意味は、外から与えられるだけではない
評価されることは嬉しいものです。
お客様から感謝される。売上につながる。周囲から認められる。そうしたことは、働く力になります。
ただ、仕事の意味を外からの評価だけに置いてしまうと、不安定になります。
評価されなければ意味がない。
数字が伸びなければ価値がない。
人から認められなければ、自分の仕事は足りない。
そう感じてしまうからです。
でも本来、仕事の意味は自分で育てていくものでもあります。
この仕事を通して、何を良くしたいのか。
どんな人の力になりたいのか。
自分は何を大切にして働きたいのか。
どんな仕事なら、長く続けたいと思えるのか。
そこを考えることが、第二のエネルギーにつながります。
無理に昔の自分へ戻らなくていい
昔のように頑張れない時、昔の自分に戻ろうとすることがあります。
もっと気合いを入れなければ。
もっと働かなければ。
もっと成果を出さなければ。
もっと若い頃のように動かなければ。
でも、無理に昔の自分へ戻る必要はないと思います。
経験を重ねたからこそ、見えることがあります。
無理をしてきたからこそ、分かる限界があります。
成果を出してきたからこそ、成果だけでは足りないことに気づきます。
それは後退ではありません。
働き方を変える時期なのだと思います。
量で押し切る働き方から、意味を考える働き方へ。
評価を追う働き方から、納得を育てる働き方へ。
自分だけが頑張る働き方から、周囲と積み上げる働き方へ。
そうやって、仕事の燃料は変わっていきます。
次のエネルギーで、もう一度働く
仕事を長く続けていくには、エネルギーが必要です。
最初のエネルギーは、成果や評価や収入かもしれません。
それは決して悪いものではありません。
むしろ、仕事を覚え、成長し、自信をつけるために必要な燃料です。
ただ、人生のどこかで、それだけでは走れなくなる時があります。
その時に必要なのは、自分を責めることではありません。
次のエネルギーを探すことです。
誰の役に立ちたいのか。
どんな仕事を残したいのか。
どんな会社にしていきたいのか。
どんな人と働きたいのか。
どんな地域や社会に関わりたいのか。
その問いの中に、これからの働き方のヒントがあります。
昔のように頑張れない。
そう感じた時は、終わりではなく、次の働き方が始まる時なのかもしれません。
成果を追う力から、意味を育てる力へ。
評価されるための仕事から、納得できる仕事へ。
外から与えられるエネルギーから、自分の中にあるエネルギーへ。
働く理由が変わる時、人はもう一度、自分の仕事を見つめ直すことができます。
そしてその先に、若い頃とは違う、深くて長く続く働き方が生まれていくのだと思います。
