mashima
フォールスコンセンサス
自分が当たり前だと思っていることは、相手も同じように分かっている。
仕事をしていると、そんな思い込みが起きることがあります。
自分には分かりやすい説明だから、相手にも伝わるはず。業界では普通に使う言葉だから、お客様も知っているはず。自分ならこの情報で判断できるから、相手も判断できるはず。
フォールスコンセンサスとは、自分の考え方や感じ方が、他の人にも同じように共有されていると思い込んでしまう心理のことです。
広告やチラシ、Webサイトでは、この思い込みに注意が必要です。
伝える側の当たり前と、受け取る側の当たり前は違うからです。

自分たちの普通は、お客様の普通ではない
会社の中では、毎日のように使っている言葉があります。
たとえば印刷なら、CMYK、トンボ、塗り足し、校了。Web制作なら、ドメイン、サーバー、CMS、SEO、SSL。
制作側にとっては普通の言葉でも、初めて相談する人には分からないかもしれません。
それなのに「これくらい分かるだろう」と思ってしまうと、説明が不親切になります。
長くその仕事をしている人ほど、初心者がどこで分からなくなるかを忘れやすいものです。
分かっているからこそ、説明を省いてしまう。
ここにフォールスコンセンサスが起きます。
相手がどこまで知っているかを考える
広告やWebサイトでは、相手の前提を想像することが大切です。
その商品を知っているのか。必要性を感じているのか。何に困っているのか。価格の相場を知っているのか。申し込みまでの流れを理解しているのか。
その前提によって、伝える内容は変わります。
すでに興味がある人には、料金や比較、導入の流れが必要です。
まだ必要性に気づいていない人には、まず「こんなことで困っていませんか」と課題を見せる必要があります。
専門知識がある人には詳しい説明が役立ちますが、初めての人には、専門用語をかみ砕いた方が伝わります。
自分たちが言いたい順番ではなく、相手が知りたい順番で伝えることが大切です。
「普通は分かる」は危険
「普通は分かるでしょう」という言葉には注意が必要です。
その普通は、誰にとっての普通なのか。
たとえば、問い合わせフォームで多くの情報を入力してもらえば、会社側は助かります。
でも、お客様はまだ相談段階かもしれません。
会社名、住所、電話番号、予算、希望納期、相談内容をすべて入力しなければならないと分かった瞬間に、問い合わせをやめてしまう人もいるでしょう。
運営側には便利でも、利用する側には面倒かもしれない。
このズレを見落とすと、せっかく興味を持った人の行動を止めてしまいます。
伝わらない原因は、相手ではなく伝え方かもしれない
チラシを配っても反応がない。
Webサイトを見ても問い合わせにつながらない。
SNSを投稿しても伝わっている感じがしない。
そんな時、「お客様が分かってくれない」と考える前に、伝え方を見直す必要があります。
専門用語が多すぎないか。対象者がぼんやりしていないか。相手の悩みから話が始まっているか。申し込み方法が分かりやすいか。
フォールスコンセンサスに気づくと、「なぜ分かってくれないのか」ではなく、「どこで分かりにくくしているのか」と考えられるようになります。
この視点は、広告やデザインではとても重要です。
自分の感覚だけで判断しない
デザインをつくる時、自分の感覚はもちろん大切です。
でも、自分が良いと思うものを、相手も良いと思うとは限りません。
若い人向けのチラシを、年配の感覚だけで判断していないか。
シニア向けの案内を、若い制作者の読みやすさだけで決めていないか。
採用ページを、会社側が言いたいことだけでつくっていないか。
自分の感覚を疑うことは、悪いことではありません。
むしろ、伝える仕事では必要なことです。
社内だけで確認すると、みんな同じ前提を持っているため、分かりにくさに気づけないこともあります。
できれば、実際の対象者に近い人の目で確認することが大切です。
人は「なんとなく」で離れていく
見る側は、「ここが分かりにくい」と丁寧に教えてくれるとは限りません。
なんとなく難しそう。
なんとなく自分向けではない。
なんとなく問い合わせしづらい。
その程度の違和感で、ページを閉じることがあります。
広告やWebサイトでは、この「なんとなく」がとても重要です。
つくる側には自然でも、初めて見る人には分かりにくいかもしれない。
自分たちには魅力的でも、相手にはまだ価値が伝わっていないかもしれない。
そう考えて見直すことが、伝わる発信につながります。
マーケティングは、自分の当たり前を疑うこと
マーケティングというと、分析や広告運用、数字の管理を思い浮かべることがあります。
でも、そのもっと前に大切なのは、自分の当たり前を疑うことだと思います。
自分が良いと思っているものを、相手も良いと思うとは限らない。
自分が便利だと思っている機能を、相手が求めているとは限らない。
自分が伝えたいことと、相手が知りたいことは違うかもしれない。
この前提に立てるかどうかで、伝え方は大きく変わります。
「分かるはず」から「どう見えるか」へ
フォールスコンセンサスは、自分の考えや感覚が、他の人にも同じように共有されていると思い込む心理です。
これは誰にでもあります。
だからこそ、広告やデザインでは、「きっと分かるはず」と考える前に、「初めて見る人にはどう見えるか」を考える必要があります。
専門用語を少しやさしくする。
相手の悩みから話を始める。
対象者をはっきりさせる。
問い合わせまでの流れを分かりやすくする。
こうした小さな改善だけでも、受け取る側の負担は減ります。
伝える仕事で大切なのは、自分が分かっていることをそのまま出すことではありません。
相手が分かる形に変えることです。
自分たちの「普通」をいったん疑ってみる。
それが、伝わる広告、伝わるチラシ、伝わるWebサイトをつくるための大切な基本なのだと思います。
