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スノッブ効果
「みんなが持っているなら、逆に欲しくない」
そんな感覚になることがあります。
人気の商品だから欲しくなるのではなく、人と違うものを選びたい。誰でも買えるものより、少し手に入りにくいものに魅力を感じる。限定品や、その地域でしか手に入らない商品に惹かれる。
このような心理を「スノッブ効果」といいます。
以前取り上げたバンドワゴン効果は、「多くの人が選んでいるから自分も選びたい」という心理でした。スノッブ効果は、その反対に近いものです。
人には、みんなと同じで安心したい気持ちがある一方で、人とは違うものを持ちたい、自分らしいものを選びたいという気持ちもあります。
マーケティングでは、この両方の心理を考える必要があります。

人と違うこと自体が価値になる
商品を選ぶ理由は、機能や価格だけではありません。
その商品を持っている人が少ないこと自体に価値を感じることがあります。
量販店でいつでも買えるものより、小さなお店でしか扱っていない商品に惹かれる。大量生産の商品より、職人が少量だけつくったものに魅力を感じる。有名な観光地より、まだあまり知られていない場所へ行ってみたくなる。
こうした選択には、「自分は人と少し違うものを選んでいる」という感覚があります。
その感覚そのものが満足につながることもあります。
つまり、人は商品そのものだけでなく、その商品を選ぶことで生まれる自分らしさにも価値を感じています。
限定という言葉が気になる理由
「期間限定」や「数量限定」という言葉を見ると、少し気になることがあります。
いつでも買えるものであれば、「また今度でいい」と思えます。しかし、今しか手に入らない、ここでしか買えないとなると、商品の見え方が変わります。
これは単に数が少ないからではありません。
限られた人しか持てないということに、特別な意味が生まれるからです。
ただし、何にでも「限定」と付ければよいわけではありません。
本当に数が限られている理由があることが大切です。生産できる量が少ない、季節によってしかつくれない、地域の素材を使っている、手作業なので大量につくれない。
そうした背景があるからこそ、限定という言葉に説得力が生まれます。
地域には、もともと希少なものが多い
地域の仕事に関わっていると、スノッブ効果につながる価値は身近なところにたくさんあると感じます。
その土地でしか採れないもの、その地域にしか残っていない文化、少量しか生産できない食品、昔から続いている製法、家族や少人数で守っている技術。
大企業のように大量につくれないことは、一見すると弱みに見えるかもしれません。
しかし、大量につくれないからこそ生まれる価値もあります。
いつでも、どこでも、誰でも買えるものではない。
それは、見方を変えれば大きな魅力になります。
地方の商品を全国の商品と同じ物差しだけで見る必要はないと思います。
大量生産できないことも、地域の外へ伝える時には一つの価値になります。
高い価格には背景を伝える必要がある
希少性のある商品は、一般的な商品より価格が高くなることがあります。
そこで大切になるのが、なぜその価格なのかを伝えることです。
単に高いだけでは、価値は伝わりません。
素材を選ぶところから手間がかかっている。大量生産できない。職人の技術が必要になる。完成まで時間がかかる。その土地でしかつくれない。
そうした背景を知ることで、価格の意味が見えてきます。
広告やWebサイトでも、価格だけを大きく見せるのではなく、その価格になるまでの理由を伝えることが大切です。
高価格であること自体が価値なのではなく、高価格になるだけの理由が価値なのだと思います。
デザインでも、人と同じでは埋もれてしまう
スノッブ効果は、商品だけでなくデザインにも関係します。
同じ業界のホームページをいくつも見ていると、似たようなデザインが並んでいることがあります。
同じような写真、同じようなキャッチコピー、同じような配色、同じようなページ構成。
もちろん、分かりやすさを考えれば、ある程度似てくるのは自然です。
しかし、すべてが似てしまうと、「なぜこの会社を選ぶのか」が見えにくくなります。
だからといって、無理に奇抜なデザインにする必要はありません。
大切なのは、その会社にしかないものを見つけることです。
会社の歴史なのか。仕事の進め方なのか。地域との関係なのか。技術なのか。代表者の考え方なのか。
そこが見えてくると、デザインにもその会社らしさが出てきます。
違いをつくるより、違いを見つける
マーケティングでは「差別化」という言葉がよく使われます。
しかし、差別化しようとしすぎると、無理に人と違うことをつくらなければならないように感じます。
本当は普通の商品なのに特別なように見せたり、他社とそれほど違わないのに強い言葉で差をつくろうとしたりすると、だんだん実態とのズレが生まれます。
私は、違いは無理につくるものではなく、見つけるものだと思っています。
なぜこの会社はこの仕事を続けているのか。
なぜこの素材を使っているのか。
なぜこのやり方を変えないのか。
なぜこの地域で仕事をしているのか。
なぜ大量生産しないのか。
そこを掘り下げていくと、その会社や商品の違いが見えてきます。
そして、その違いこそがブランドになります。
誰にでもおすすめすると、特徴が薄くなる
商品を売る側からすると、できるだけ多くの人に買ってもらいたいと思います。
そのため、「どなたにもおすすめです」という表現を使いたくなることがあります。
しかし、誰にでもおすすめできるものは、逆に誰にとって特別なのかが分かりにくくなることがあります。
「こういう人に使ってほしい」
「こういう価値観の人に選んでほしい」
そこをはっきりさせることで、商品は強くなります。
対象を絞ると、お客様が減るように感じるかもしれません。
でも、その対象に入っている人からすると、「これは自分のための商品だ」と感じやすくなります。
スノッブ効果は、ただ希少性をつくるだけでなく、誰に選んでほしい商品なのかを考えることにもつながります。
みんなと同じで安心したい時と、違いたい時がある
人の心理は単純ではありません。
ある時は、みんなが使っているものを選びます。
またある時は、みんなが持っていないものを選びます。
たとえば、生活に欠かせない商品であれば、多くの人が使っている安心感を重視するかもしれません。
一方で、ファッションや趣味、旅行、贈り物、こだわりの食品などでは、人と違うことに価値を感じやすくなります。
だから、商品を売る時には、単純に「人気があります」と伝えればいいわけではありません。
その商品を選ぶ人が、安心を求めているのか、それとも特別感を求めているのか。
そこを考える必要があります。
小さな会社にも、希少性はある
地域の小さな会社は、大企業のような知名度や広告予算を持っていないことがあります。
でも、小さいからこそできることがあります。
一人ひとりのお客様と長く付き合える。代表者と直接話せる。地域の事情を知っている。細かな相談にも対応できる。案件ごとに柔軟に動ける。
こうしたことは、大きな会社には難しい場合があります。
それも一つの希少性です。
大企業のように見せようとする必要はありません。
小さい会社には、小さい会社だからできる仕事があります。
そこをきちんと伝える方が、結果として他社との違いが見えてきます。
スノッブ効果から考えるブランドづくり
スノッブ効果とは、人と違うものや、手に入りにくいものに価値を感じる心理です。
この心理を広告のテクニックとしてだけ使うと、「限定」「特別」「希少」といった言葉を並べるだけになってしまいます。
でも、本当に考えたいのは、その商品や会社にしかないものは何かということです。
他では手に入らない。
この場所だからできる。
この人だからつくれる。
この会社だから相談できる。
そうしたものがあるなら、それは十分な価値になります。
私たちのような広告やデザインの仕事は、何もないところから価値をつくっているわけではありません。
すでにその会社や商品が持っている価値を探し、それを伝わる形にする仕事です。
たくさんの人に選ばれることも大切です。
一方で、「ここだから選びたい」と思ってもらえることも大切です。
スノッブ効果を考えると、商品の価値は機能や価格だけではなく、その商品がどれだけ他と違う意味を持っているかによっても変わることが分かります。
無理に特別なものに見せるのではなく、本当にある違いを見つける。
そして、その違いを必要としている人に丁寧に伝える。
それが、長く選ばれるブランドをつくることにつながっていくのだと思います。
