mashima
両面提示の法則
ホームページ制作を検討しているお客様に、
「WordPressなら更新しやすく、機能も追加できます。とても便利です」
とだけ説明する会社と、
「WordPressは更新しやすく拡張性もあります。ただし、定期的なアップデートやセキュリティ管理は必要です」
と説明する会社があったら、どちらの話を信用するでしょうか。
おそらく後者の方が、「ちゃんと分かった上で説明してくれている」と感じる人も多いと思います。
商品やサービスの良い面だけではなく、注意点や弱い部分もあわせて伝える方法を、一般に「両面提示」と呼びます。
広告というと、どうしても良いことだけを伝えたくなります。
しかし、良いことばかり並んでいる広告ほど、見る側は「本当にそうなのだろうか」と疑うことがあります。

良いことしか書いていないと、逆に不安になる
広告をつくる側は、その商品を良く見せたいと思います。
「高品質」「低価格」「安心」「便利」「スピード対応」「充実したサポート」と、できるだけプラスの情報を並べたくなります。
でも、見る側は広告だと分かった上で見ています。
特に今は、広告を見たあとに検索したり、口コミを確認したり、他社と比較したりすることが簡単にできます。
だから、あまりにも良いことしか書いていないと、「何か都合の悪いことを隠しているのでは」と感じることがあります。
逆に、「ここは少し不便です」「この場合には向いていません」といった説明があると、それ以外の情報まで信用しやすくなることがあります。
完璧な商品など、ほとんどないことを私たちは知っているからです。
弱みを伝えることは、商品を悪く見せることではない
両面提示というと、わざわざ自社商品の欠点を広告に書くように聞こえます。
でも、大切なのは欠点を並べることではありません。
どんな特徴にも、見る方向によってメリットとデメリットがあることを正直に伝えることです。
たとえば、少人数の会社なら、大企業のように何百件もの仕事を同時には受けられないかもしれません。
しかし、その代わり一つの案件に深く関わることができる。
大量生産の商品なら価格を下げやすい一方で、細かな個別対応は難しいことがあります。
反対に、手作業の商品は価格が高くなりやすいけれど、一つひとつ丁寧につくることができます。
つまり、弱みに見えることが、そのまま特徴の裏側になっていることがあります。
両面を見せることで、その商品の性格がより分かりやすくなります。
私たちの仕事でも、できないことはあります
制作会社も同じです。
「何でもできます」と言った方が仕事は取りやすそうに見えます。
でも、実際には会社によって得意なことも、不得意なこともあります。
私たちも、印刷物やホームページ、広告、映像などさまざまな仕事をしていますが、すべての分野で何でもできるわけではありません。
案件の規模や内容によっては、他の専門会社に依頼した方が良い場合もあります。
そういう時に無理に「できます」と言って受注するより、「この部分は別の専門会社の方が向いています」と伝えた方が、お客様にとって結果が良いこともあります。
仕事を断ることや、自社の範囲を正直に伝えることも、長い目で見れば信頼につながると思っています。
見積もりでも両面提示は大切
見積もりの説明でも同じです。
価格を安く見せようと思えば、できることだけを強調することもできます。
でも、制作を始めてから「これは別料金です」「そこまでは含まれていません」と言われたら、お客様は不満を感じます。
だから最初に、どこまで含まれているのか、何が別途必要になる可能性があるのかを説明しておくことが大切です。
たとえばホームページなら、制作費だけでなく、公開後にはサーバーやドメイン、更新、セキュリティ管理などが必要になります。
最初は少し説明が多く感じられるかもしれません。
でも、後から初めて知るより、最初から分かっていた方が安心して判断できます。
両面提示は、売るための心理テクニックというより、後から「聞いていなかった」を減らす考え方でもあります。
デメリットには、その後の説明が必要
ただし、「悪い部分も言えば信頼される」と単純に考えるのも違います。
大切なのは、そのデメリットをどう考えているのかまで伝えることです。
たとえば、
「この方法は費用が少し高くなります。ただ、長期間使うことを考えると更新しやすくなります」
と説明すれば、なぜその価格なのかが分かります。
「静的なHTMLサイトは管理画面から簡単に更新できません。ただし、更新頻度が低いサイトでは、管理機能を持たないシンプルな構成が適している場合もあります」
と説明すれば、不便さと採用する理由の両方が見えます。
単に弱点を告白するのではなく、メリットとデメリットを理解した上で提案していることが大切です。
広告でも「向いていない人」を伝えてみる
商品やサービスによっては、「こんな方には向いていません」と伝える方法もあります。
一見すると、お客様を減らしてしまうように感じます。
でも、対象をはっきりさせることで、逆に「これは自分に合っている」と判断しやすくなることがあります。
たとえば、価格だけを最優先したい人には向いていないサービスかもしれません。
その代わり、打ち合わせから一緒に考え、長く使えるものをつくりたい会社には向いている。
そう伝えた方が、お互いに無理のない関係をつくれます。
誰にでも良いサービスと言ってしまうと、結果として誰のためのサービスなのか分からなくなることがあります。
口コミが信用される理由にも似ている
商品の口コミを読む時も、良い評価しかないと少し不思議に感じることがあります。
「すべて完璧でした」
「絶対おすすめです」
という評価が並ぶより、
「商品は良かったけれど、届くまで少し時間がかかった」
といった内容の方が、かえって現実味を感じることがあります。
悪い点も書かれていることで、良い点まで本当に感じられるからです。
私たちは、少し欠点があるくらいの方が「これは本当の話だ」と感じることがあります。
企業からの発信でも、完璧に見せすぎないことが、信頼につながる場合があります。
営業では、契約を取ることより判断してもらう
営業の目的を「契約してもらうこと」だけにすると、メリットばかり説明したくなります。
でも、本来はお客様に判断してもらうための情報を提供することも営業の仕事です。
良いところも伝える。
注意点も伝える。
他の方法が向いている場合には、それも伝える。
その上で選んでもらう。
短期的には、デメリットを説明したことで契約につながらないこともあるかもしれません。
でも、「あの会社は都合のいいことだけを言わなかった」という印象は残ります。
その信頼が、別の仕事や将来の相談につながることもあります。
自社の弱みは、隠すより整理する
会社の広告を考える時に、「弱みを見せてはいけない」と考えがちです。
でも、弱みを隠したからといって、なくなるわけではありません。
それよりも、その弱みがなぜ存在するのかを考えてみると、自社の特徴が見えてくることがあります。
小さな会社だから、大量の仕事は受けられない。しかし、代表や担当者との距離は近い。
地域密着だから全国対応の拠点はない。しかし、その地域についてはよく知っている。
手間をかけて制作するから価格だけでは安くない。しかし、企画や文章まで一緒に考える。
このように見ると、弱みと強みは表裏一体です。
広告で必要なのは、弱みを消すことではなく、自分たちが何を大切にしている会社なのかを明確にすることなのだと思います。
両面提示は「正直に売る」ということ
両面提示とは、メリットだけではなく、デメリットや注意点もあわせて伝える方法です。
ただし、すべての弱点を大きく宣伝すれば良いという話ではありません。
お客様が判断するために必要な情報を、都合よく隠さないことが大切です。
広告には、人を動かす役割があります。
でも、そのために良いところだけを大きくしてしまえば、実際の商品とのズレが生まれます。
私たちが広告やホームページをつくる時にも、その会社を実際以上によく見せることが目的ではありません。
良いところは、きちんと良く見せる。
注意が必要なところは、必要に応じて説明する。
その上で、「この会社なら頼みたい」と思ってもらう。
それが一番長く続く広告だと思います。
良いことだけを書く広告より、少し正直な広告の方が強いことがあります。
なぜなら、お客様が最終的に買っているのは商品だけではなく、「この会社の話なら信用できそうだ」という安心感でもあるからです。
両面提示の法則を知ると、広告とは良く見せる技術だけではなく、正しく伝えて、納得して選んでもらうための仕事でもあるのだと、あらためて感じます。
