mashima
リフレーミング効果
「古い建物」と聞くと、少しマイナスの印象を持つかもしれません。
でも、「長い年月を地域とともに歩んできた建物」と言われると、同じ建物でも見え方が変わります。
「小さな会社」は、「規模が小さい会社」とも言えますが、「担当者との距離が近く、細かな相談がしやすい会社」と見ることもできます。
物事そのものは変わっていません。変わったのは、見る角度です。
このように、同じ出来事や特徴でも、捉える枠組みを変えることで意味や印象が変わることを「リフレーミング」といいます。
広告やデザインの仕事をしていると、この考え方はとても身近です。なぜなら、私たちの仕事は、まだ価値として認識されていないものを、違う角度から見つけ直す仕事でもあるからです。

弱みは、見方を変えると特徴になる
企業から相談を受けると、「うちは特別な会社ではないので、何をアピールしたらいいか分からない」と言われることがあります。
しかし、話を聞いていくと、意外とたくさんの特徴があります。
社員数が少ないということは、大量の案件には対応しにくいかもしれません。その一方で、お客様との距離が近く、一つひとつの仕事に深く関われるとも考えられます。
商品数が少ない会社も、「品揃えが少ない」と見ることもできますが、「本当に必要なものに絞って専門性を高めている」と考えることもできます。
地方にある会社なら、「都市部から遠い」と見ることもできますが、「地域の事情をよく理解している会社」と捉えることもできます。
リフレーミングは、悪いものを無理やり良く言い換えることではありません。
同じ事実の中にある、別の意味を見つけることです。
広告は、商品の見方を変えることができる
たとえば、少し高い商品があったとします。
ただ「価格が高い」と見せれば、デメリットになります。
しかし、なぜ高いのかを伝えることで印象は変わります。大量生産ではなく一つずつ手作業でつくっている。修理しながら長く使える。地域の素材を使っている。その背景まで見えると、「高い商品」から「長く使うための商品」へと見方が変わることがあります。
ここに広告の役割があります。
値段を変えなくても、伝え方によって、その値段の意味を変えることはできます。
商品そのものを変える前に、今ある価値が正しく見えているかを考えることも大切です。
「できないこと」をどう見るか
仕事では、できないことを弱みと考えがちです。
たとえば、制作期間が短くない会社があったとします。「納期が遅い」と表現すればマイナスです。
でも、ヒアリングや企画に時間をかけ、内容を考えてから制作する会社であれば、「時間がかかる」のではなく、「考える工程を省かない」と表現できます。
もちろん、本当に仕事が遅いだけなら言い換えても意味はありません。
リフレーミングで大切なのは、事実をねじ曲げないことです。
理由があり、その理由に価値があるなら、その見え方を変えて伝える。そこに説得力が生まれます。
デザインにもリフレーミングがある
リフレーミングは、言葉だけではありません。
写真の撮り方やデザインでも、同じものの見え方は変わります。
古い工場でも、単に設備の古さを写せば「昔ながらの工場」に見えます。しかし、長年使い込まれた道具や職人の手元を丁寧に撮れば、「技術を積み重ねてきた現場」に見えることがあります。
地域の小さなお店も、店舗の規模だけを見れば小さい。でも、店主とお客様が話している場面や、手作業で商品をつくる様子を見せれば、「顔の見える店」という価値が伝わります。
写真、コピー、レイアウトによって、何に目を向けてもらうかを変える。
それもデザインによるリフレーミングだと思います。
採用では、仕事の大変さも見方を変えられる
採用の広告でも、リフレーミングは使えます。
たとえば、「仕事を覚えるまで時間がかかる」という特徴がある仕事なら、単に大変さを隠すのではなく、「時間をかけて専門技術を身につける仕事」と伝えることができます。
「毎日違う仕事をするので覚えることが多い」は、「毎日同じ作業ではなく、経験を積みながら対応力が身につく」と見ることもできます。
採用広告で重要なのは、仕事を楽に見せることではありません。
大変さにも意味があるなら、その意味まで伝えることです。
その方が、入社した後の「思っていた仕事と違った」というズレも少なくなります。
問題を変えられなくても、見方は変えられる
リフレーミングは、マーケティングだけでなく、仕事の考え方にも使えると思います。
たとえば、お客様から厳しい意見をもらった時。
「文句を言われた」と考えることもできますが、「無料で改善点を教えてもらった」と考えることもできます。
競合会社が増えた時も、「仕事を奪われる」と見ることもできますが、「自社の違いを考えるきっかけができた」と見ることもできます。
失敗した仕事も、「失敗した」で終われば嫌な経験ですが、「次に同じ失敗をしないための材料ができた」と考えることもできます。
起きた事実は変わりません。
でも、その事実から何を受け取るかは変えられます。
「安くない」を「高い価値」に変えるには理由がいる
リフレーミングは便利な考え方ですが、言葉だけを変えても通用しません。
価格が高い商品を「高品質です」と言い換えるだけでは、ただの宣伝です。
なぜ高品質なのか。
何に時間をかけているのか。
どんな素材を使っているのか。
誰がつくっているのか。
その根拠があって初めて、見方を変えることができます。
私たちが広告をつくる時も、まず言葉を考えるのではなく、その前に会社や商品について話を聞くことを大切にしています。
材料がなければ、良いリフレーミングはできません。
価値がないのではなく、まだ言葉になっていないだけかもしれない
会社自身が「普通だ」と思っていることが、外から見ると価値になっていることがあります。
昔から当たり前に続けていること。
地域では普通だと思っている技術。
社員が当然のようにやっている細かな対応。
社内では特別ではないので、広告に載せようとも思わない。
でも、お客様から見れば、それが会社を選ぶ理由になるかもしれません。
私たちがヒアリングをする時に面白いのは、会社の人が何気なく話した一言の中に、広告の一番大事な部分が見つかることがあることです。
「それ、他の会社でも普通ですよ」と言われることがありますが、実際に調べてみると、そうでもないことがあります。
価値がないのではなく、自分たちでは価値だと気づいていないだけかもしれません。
リフレーミングは、価値をつくるより見つける考え方
リフレーミングとは、同じ出来事や特徴を別の枠組みから見ることで、その意味や印象を変える考え方です。
広告に置き換えるなら、商品を実際以上によく見せる技術ではありません。
すでにあるものを、別の角度から見つけ直すことです。
「小さい」を「距離が近い」と見る。
「古い」を「歴史がある」と見る。
「時間がかかる」を「丁寧に工程を重ねる」と見る。
ただし、そこに事実があることが前提です。
私たちのような広告やデザインの仕事では、何もないところから魅力をつくり出しているように見えるかもしれません。
でも実際には、その会社の中にすでにあるものを探していることの方が多いと思います。
会社の人にとっては当たり前でも、外から見れば価値がある。
弱みに思えていたことが、見方を変えれば特徴になる。
伝わらなかったものが、言葉や写真の角度を変えることで伝わり始める。
リフレーミングを考えると、広告とは「良く見せること」よりも、今まで見えていなかった価値を見えるようにすることなのだと思います。
