mashima
バーナム効果
「40代の会社経営者。売上を伸ばしたいと考えていて、新しい集客方法にも興味がある。ただ、日々の仕事が忙しく、なかなか手をつけられない。」
こう書くと、ずいぶん具体的な人物像に見えます。
でも、少し考えてみると、かなり多くの経営者に当てはまりそうです。
売上は伸ばしたい。新しいことにも興味はある。でも忙しい。
「まさに自分のことだ」と感じる人は多いかもしれません。
このように、広く多くの人に当てはまる内容でも、自分自身のことを言われているように感じる心理を「バーナム効果」と呼びます。
広告やマーケティングを考える時、この心理は「自分ごと化」の入口として興味深い一方、ペルソナ設定では注意したいところでもあります。
なぜなら、なんとなく当てはまる人物像をつくっただけでは、本当に相手を理解したことにはならないからです。

「30〜50代の経営者」はペルソナではない
ホームページや広告の打ち合わせで、
「どんな人に見てもらいたいですか?」
と聞くと、
「30代から50代くらいの経営者です」
「子育て世代の女性です」
「地元に住む高齢者です」
といった答えが返ってくることがあります。
もちろん、最初の整理としては必要です。
ただ、これだけでは広告をつくるにはまだ広すぎます。
同じ40代の経営者でも、会社を大きくしたい人と、今の規模を維持したい人では考えていることが違います。
ホームページを持っていない人と、すでに持っているけれど古くなって困っている人でも、必要な情報は違います。
「経営者」という属性だけでは、その人が何に悩み、何をきっかけに行動するのかまでは分かりません。
ペルソナ設定で本当に考えたいのは、年齢や職業よりも、その人が置かれている状況です。
バーナム効果だけでは広告は浅くなる
広告では、「自分にも当てはまる」と思ってもらうことは大切です。
たとえば、
「集客にお困りではありませんか?」
「ホームページを見直したいと思っていませんか?」
「採用でお悩みではありませんか?」
こうした言葉は、多くの人に当てはまります。
だから反応してもらえる可能性もあります。
でも、それだけでは他の広告との違いがほとんどありません。
「集客に困っている会社」は無数にあります。
その中でも、
「チラシやSNSを続けているけれど、それぞれがバラバラで、何が成果につながっているのか分からない」
というところまで踏み込めば、対象はかなり具体的になります。
当てはまる人数は減ります。
でも、当てはまった人には強く届きます。
広告は、広く薄く当てることより、必要な人に深く当てることの方が重要な場合があります。
ペルソナは「架空の人物をつくること」ではない
ペルソナ設定というと、名前や年齢、家族構成、趣味まで細かく決める方法が紹介されることがあります。
「田中さん、45歳、妻と子ども2人、趣味はゴルフ」といった設定です。
もちろん、人物をイメージしやすくするためには役立ちます。
ただ、私たちが広告を考える時に重要なのは、名前や趣味を決めることではないと思っています。
それよりも、
その人は今、何に困っているのか。
なぜまだ行動していないのか。
何が不安なのか。
どんな言葉なら理解しやすいのか。
何を見れば安心できるのか。
そこを考えることの方が重要です。
ペルソナは、架空の人物を細かく設定する遊びではありません。
相手の判断や行動を想像するためのものです。
実際のお客様からペルソナをつくる
私たちのような地域の会社の場合、ペルソナは頭の中だけでつくらない方がいいと思います。
すでに相談に来ているお客様の中に、たくさんの材料があります。
「ホームページが古いのは分かっていたけれど、どこに頼めばいいか分からなかった」
「以前制作会社に相談したら、専門用語ばかりで話がよく分からなかった」
「チラシを自分でつくっているけれど、本当にこれでいいのか不安だった」
こうした実際の言葉は、とても重要です。
広告をつくる側が想像した悩みより、実際のお客様が口にした言葉の方が具体的です。
そして、同じような悩みを抱えている人が見た時に、「それ、自分も思っていた」と感じてもらえます。
バーナム効果のように、誰にでも当てはまる言葉で「自分のことかも」と思わせるのではなく、実際の声から「本当に自分のことだ」と感じてもらう。
その違いは大きいと思います。
ペルソナが変われば、同じ商品でも伝え方が変わる
同じホームページ制作でも、相手によって広告の内容は変わります。
初めてホームページを持つ人であれば、専門用語を使わず、制作の流れや費用について丁寧に説明した方が安心できます。
一方、すでにホームページを持っている会社なら、「なぜ問い合わせにつながらないのか」「今のサイトのどこを改善すべきなのか」といった内容の方が関心を持ってもらえるでしょう。
商品は同じでも、相手が違えば知りたいことが違います。
だから、広告をつくる前にペルソナを考える必要があります。
「何を売るか」から考えるのではなく、「誰が、なぜそれを必要としているのか」から考える。
この順番で考えると、キャッチコピーも写真もページ構成も変わってきます。
ペルソナ設定は「伝えないもの」を決めるためにもある
対象を絞ると、お客様を減らしてしまうように感じることがあります。
だから、できるだけ多くの人に当てはまる広告にしたくなります。
しかし、その結果として言葉がぼんやりしてしまうことがあります。
「高品質なサービスをご提供します」
「お客様に寄り添います」
「さまざまなニーズに対応します」
どれも間違ってはいません。
ただ、多くの会社が言える言葉でもあります。
ペルソナを決める意味は、何を言うかを決めるだけではありません。
何を言わないかを決めることでもあります。
この人に必要のない説明は減らす。
この人が一番不安に思っていることを先に伝える。
そうやって情報を整理すると、広告は分かりやすくなります。
ペルソナは一度つくったら終わりではない
お客様の行動は変わります。
以前なら電話で相談していた人が、今はまずWebサイトを確認します。
検索だけでなく、SNSや動画、口コミ、AIを使って会社を調べる人もいます。
同じ業種でも、数年前と今では情報の探し方が違います。
だからペルソナも、一度設定したものをずっと使えばよいわけではありません。
実際のお問い合わせ内容やアクセス状況、営業現場で聞いた声を見ながら、
「今のお客様は、本当にこう考えているだろうか」
と定期的に見直す必要があります。
ペルソナは固定された人物像ではなく、顧客を理解するための仮説です。
実際のお客様を見ながら、その仮説を少しずつ修正していくものだと思います。
「誰にでも当てはまる」から一歩先へ
バーナム効果とは、広く多くの人に当てはまる内容でも、「自分のことだ」と感じやすい心理です。
広告でも、「自分に関係がある」と思ってもらう入口としては役立つ考え方です。
しかし、本当に伝わる広告をつくるなら、そこから一歩先へ進む必要があります。
「経営者の方へ」ではなく、どんな経営者なのか。
「採用にお困りの会社へ」ではなく、採用の何に困っているのか。
「ホームページを見直したい方へ」ではなく、なぜ見直したいと思ったのか。
そこまで考えるのがペルソナ設定です。
私たちが広告やホームページをつくる時にも、最初からきれいな言葉を考えるわけではありません。
まず、お客様のことを知る。
その人が何に困り、何を不安に感じ、どんな状態になりたいのかを考える。
そこから言葉やデザインをつくっていきます。
誰にでも「なんとなく自分のこと」と思ってもらえる広告より、たった一人でも「これはまさに自分のことだ」と感じてもらえる広告の方が、強く人を動かすことがあります。
バーナム効果を知ることは、広く当てはまる言葉の力を知ることでもあります。
同時に、本当に必要なのは、当てはまる人を増やすことではなく、届けたい人を深く理解することなのだと思います。
