mashima
摩擦を怖れない人が、仕事を前に進める
仕事をしていると、できるだけ摩擦を避けたくなることがあります。
相手と意見が違う時、言うべきことがある時、今の進め方に違和感がある時、それを口に出すことで空気が悪くなるのではないかと考えてしまう。誰かに嫌われるかもしれないし、面倒な人だと思われるかもしれない。そう思うと、何も言わずにやり過ごした方が楽に感じることもあります。
しかし、摩擦のない仕事が、必ずしも良い仕事とは限りません。
本当に良いものをつくろうとすれば、意見がぶつかることがあります。今のままでいいのかと問い直す場面もあります。相手の考えと自分の考えが違うからこそ、新しい視点が生まれることもあります。
摩擦とは、ただの対立ではありません。物事を前に進めるために必要な刺激でもあるのだと思います。

■摩擦を避けると、仕事は無難になる
摩擦を避け続けると、仕事は一見スムーズに進んでいるように見えます。
誰も強く反対しない。打ち合わせも穏やかに終わる。言われた通りに進めれば、表面的なトラブルは少ないかもしれません。しかし、その裏側で、本当は必要だった意見や改善のきっかけが失われていることがあります。
「本当はこうした方がいい」と思っていたのに言わなかった。「このままでは弱い」と感じていたのに黙っていた。「もっと良くできる」と分かっていたのに、場の空気を優先してしまった。そうした小さな遠慮が積み重なると、仕事はどこかで無難なものになります。
無難な仕事は、失敗しにくいかもしれません。しかし、人の心に残るほどの強さや、状況を変えるほどの力は生まれにくいものです。
■意見が違うから、考えが深くなる
自分と違う意見を聞くことは、時に不快です。
自分が考えてきたことを否定されたように感じたり、相手に理解されていないように思えたりすることもあります。しかし、そこで感情的になるのではなく、なぜ相手はそう考えるのかを見ていくと、自分だけでは気づけなかった視点が見えてくることがあります。
意見が違うということは、見ている場所が違うということです。
お客様の立場、現場の立場、制作側の立場、経営側の立場。それぞれ見えている景色が違うから、意見も違ってきます。その違いを面倒なものとして避けるのか、それとも仕事を良くする材料として受け止めるのかで、結果は大きく変わります。
摩擦があるから、考えが深くなる。違和感があるから、もう一度見直す。反対意見があるから、説明の精度が上がる。そう考えると、摩擦は仕事の邪魔ではなく、仕事を磨くきっかけになります。
■言うべきことを言わないと、自分が弱くなる
摩擦を避けるために言うべきことを言わないでいると、その場は楽かもしれません。
しかし、それを続けていると、自分の仕事への姿勢が少しずつ弱くなっていきます。
本当は必要だと思っているのに言わない。本当は違うと思っているのに合わせる。本当はもっと良くできると思っているのに踏み込まない。そういう働き方に慣れてしまうと、自分の中にある判断や信念まで曖昧になっていきます。
もちろん、何でも強く言えばいいわけではありません。相手を言い負かすことが目的ではありませんし、自分の意見だけを押し通すことが正しいわけでもありません。
大切なのは、仕事を良くするために必要なことを、相手に届く言葉で伝えることです。摩擦を恐れずに伝えるとは、乱暴になることではなく、誠実に向き合うことなのだと思います。
■摩擦は、前に進もうとする証拠
何かを変えようとすれば、必ず摩擦は生まれます。
新しい提案をすれば、今までのやり方とぶつかることがあります。もっと良くしようとすれば、誰かの慣れた方法を見直す必要が出てきます。本気で成果を出そうとすれば、曖昧な部分をそのままにはできなくなります。
つまり、摩擦があるということは、物事が動こうとしている証拠でもあります。
何も変えなければ、摩擦は少ないかもしれません。しかし、それでは進歩も生まれません。今まで通りでいい、波風を立てない方がいい、誰かが決めるまで待っていればいい。そう考えているうちは、自分から仕事を前に進める力は育ちにくいものです。
摩擦を怖がらずに向き合う人は、自分の考えを持ち、相手の考えも受け止めながら、より良い形を探そうとします。その姿勢が、仕事に前向きな力を生み出します。
■摩擦の先に、信頼が生まれることもある
意見がぶつかった相手とは、関係が悪くなると思いがちです。
しかし、仕事では逆のこともあります。きちんと向き合い、必要なことを伝え、相手の意見も受け止めながら一つの答えを探していくと、むしろ信頼が深まることがあります。
この人は、ただ合わせるだけの人ではない。この人は、本当に仕事を良くしようとしている。この人は、言いにくいことも逃げずに考えてくれる。そう感じてもらえれば、摩擦はただの衝突ではなく、信頼の入口になります。
大切なのは、摩擦の起こし方です。
相手を否定するためではなく、仕事を良くするために伝える。自分の正しさを証明するためではなく、より良い判断をするために話し合う。そうした姿勢があれば、摩擦は関係を壊すものではなく、関係を強くするものにもなります。
■摩擦を恐れず、前向きにぶつかる
摩擦を怖れるなという言葉は、誰かと争えという意味ではないと思います。
自分の意見を持つことから逃げるな。必要な違和感を飲み込むな。仕事を良くするためのぶつかり合いを怖がるな。そういうことなのだと思います。
摩擦を避けるだけの仕事は、次第に弱くなります。言うべきことを言わず、考えるべきことを考えず、変えるべきことを変えないまま進めていくと、仕事も自分も小さくまとまってしまいます。
反対に、摩擦に向き合う人は成長します。違う意見を受け止めることで視野が広がり、自分の考えを伝えることで言葉が鍛えられ、より良い答えを探すことで仕事の質が上がっていきます。
摩擦は、進歩の邪魔ではありません。
前に進もうとするから摩擦が生まれ、その摩擦を越えようとするから工夫が生まれます。大切なのは、摩擦を避けることではなく、その摩擦を仕事の力に変えていくことです。
言うべきことを丁寧に言う。違う意見から学ぶ。ぶつかった先に、より良い形を探す。
その姿勢がある人は、ただ流されるのではなく、自分の仕事を自分の力で前に進めていけるのだと思います。
